彼の頭はつっかえた

なんか雑記ばかり書いてますが、一応掌編載せる予定です。

雑記14

泉鏡花という作家がいる。文学史上では、明治期に尾崎紅葉門下の一人として当時の社会を批判したような作風(確か観念小説と呼ばれていたか)で載っているが、むしろ、観念小説と呼ばれたもの以外の方が真骨頂の印象がある。日本的な幻想小説を書いている方で、幽霊や龍神などがなんらかのテーマ性を象徴させて出てくるようだ。「ようだ」と書いたのは、僕も数作品しか読んでいない上に、幽霊や龍神が司る象徴性を理解していないからだ。もしかすると、八百万の神々的なもので、象徴性を意識しているわけではないかもしれない。水木しげるが漫画化しているので、気になるならその辺りからが良さそうだ。

  院の講義で数年前にいくつか読む機会があったが、それ以外ではあまり読む気になれなかった。雅文体の敷居の高さと、象徴性の難解さ、何なら語られる視点もまた独特なので、これほど取っつきにくい作家もいないかもしれない。

  今はどの程度の人気か分からないが、一時期文豪ブームを作ろうとしていた時期がある。「文豪」をキャラクターに置き換えた商品がいくつか展開されていた。大学でも、それで文学に興味を持ってくれるならと思う方は多かった。実際、その影響で観光客が増えていたらしい。

  だが、振り返ると、なかなか文学の興味まで進めた人は少なかったのではないかと思う。あくまでも、商品化された「文豪」が好かれたのはそのキャラクターであって、作家性との繋がりは希薄だった。作家を知る機会にはなったが、小説を読む機会にはなったのだろうか。

  それに泉鏡花は女の子にされていた。名前のせいだろうが、実際は潔癖症で職人気質のおじいさんだったのだ。豆府くいてえ