彼の頭はつっかえた

なんか雑記ばかり書いてますが、一応掌編載せる予定です。

雑記「祖父」

数年前の今日、祖父が死んだ。何歳かも定かではないが、老衰で亡くなったようだ。祖父は仕事熱心な方だったようで、ほとんどの人生を内科の仕事に費やしてきたと思われる。趣味らしいものもスキーしかなく、ちょっと足を悪くして以降はやらなくなった。それも相まってか、手の震えが抑えられなくなって、仕事を辞めてからは、一気に認知症が進んだようだった。
しかし、生命力とはすごいものだ。認知症になってからというもの、人目を気にせず自室で自慰をしていたこともあった。死が近づくと子孫を残したくなるものらしいと聞いたことはあるが、まさにその通りの行動だったのかもしれない。
僕の父もまた、クリニックを継いだ医師なので、祖父の今後をどうするか兄弟や母(僕からすれば祖母)と話し合ったらしい。兄弟たちは少しずつ栄養を減らして衰弱死させるのが良いという結論に至っていたようだが、祖母は受け入れられなかったようだ。なんだかんだ祖父はできる限り延命された。
だが、気持ちだけでは介護は続かないものらしい。祖父は夜な夜な叫び出したり、急に外出たりされるので祖母も心底疲れたことだろう。亡くなってからは少しホッとしていたようにも思う。
どうやら、死ぬにしてもなかなか苦労をかけるものらしい。迷惑を考えると、うかうかと死ねないのも困った社会な気もする。