彼の頭はつっかえた

なんか雑記ばかり書いてますが、一応掌編載せる予定です。

感想「シン・エヴァンゲリオン」

シンエヴァは見終わってなんとも言えない気持ちになった。直近に観た作品がターンエーやGレコなわけだが、それと比べると、ノリが全く異なるものだった。良い悪いというよりも、楽しみ方が異なるのだろうと思った。単純な好みで言えば、特に何とも思わなかった。「なんとも言えない気持ち」というのも、この無味無臭な印象のせいだ。とはいえ、二時間半をそれほどダレずに観れたので、良い作品なんだろうと思う。
本作を考察できるほど良い鑑賞者にはなれないが、少なくとも、シンエヴァはメタを絡めようとしていた。このメタは主に演出の面で強く現れており、そのまま成長物語に繋がっている。メタ意識は俯瞰的に物事を捉えようとすることと同じだと思うので、主人公を最終的に成長させようとするなら(かつ、求められているエヴァンゲリオン感を出すとすれば)、こうした演出は必要だったのだろうと思う。この成長を観客にも促すために説明的な会話が多かったのだ、と考えるのはやりすぎな気もするが(これまであまりにも設定の謎を盛り過ぎた結果とも受け取れるからだ)、どちらにせよ、エヴァを終わらせるつもりなのだろうと思った。
私小説的な評価をされがちな理由も、なんとなく理解できた。というのも、良くも悪くもメタの部分が「映画」あるいは「アニメ」という虚構を意識させ、その作り手も意識せざるを得ないからだ。この点は、僕は庵野秀明エヴァンゲリオンの熱狂的なファンではないので割と気にならなかった。
逆に気になったのは台詞回しだ。本作の会話は説明が多く、良く言えば、観客に配慮していた。ただ、悪く言えば、リアルさに欠けている印象を受けた。(※何も知らないシンジに村のシステムを説明する場面などは、シンジと客の知識が同等なので、それほど違和感なく楽しめた)これは説明だけでなく、全体的に繰り返される言い回しにも感じた。セルフパロディな言い回しも多かったので、その辺も少し恥ずかしくなった。ループというのが作中の要素にありそうだったので、それを意識したということかもしれない。また、前半は少し説教臭く感じた。
後半部になると、台詞以外にも細かなツッコミどころは多いのだが、前半部ですでに本作がリアルさを軸に置かれていないものだと感じたので、派手な演出になんとなくすげえなぁぐらいの楽しみ方をした。ヘルシングやゲッターを観た時と似たような感覚だ。細かいことはともかく、盛り上がれば全て良しという具合だった。それで二時間半だれずに観れたのだから、十分面白かったのだろう。
本作をどのような感覚で楽しめば良いのかが、どうにも難しく感じた。旧劇の方が緊張感や映像は好みだが、その好みも観た当時の精神状態が影響していたのかもしれない。それに新劇は「旧劇の後に作られた」ことを抜きに鑑賞することはできないので、旧劇で受けた衝撃を抜きに評価することも難しい。何より難しいと感じたのは、本作をエンタメとして観るか、芸術として観るかだった。台詞回しや心理描写はあくまでもエンタメだが、映像の面白さは芸術なのか? などと適当に書いてみたが、ある程度観客側が想像しなくてはならないような細かな台詞回しはあまりなかったので、基本的にはエンタメなのだと思った。
元々「エヴァンゲリオン」の何が面白かったかを振り返ると、ハッタリを効かせて盛り上げるところや、エログロや、なんだかんだ成長物語に持っていく簡潔さなどだろうか。そういう意味で、今回もそれほど大きくは変わらなかったような気もする。さすがに慣れてきたのかもしれない。